消費者被害か本人の意思か

最近相談があったケースです(内容はアレンジしています)。

後見(保佐)の申立ての相談です。ご本人は70代の女性。最近認知症が進行し、
かかりつけ医から保佐相当の診断書が出る見込みです。親族からは、ここ数年、
特定の販売店からの宝飾品の購入が多いようだが、騙されて購入してしまって
いるのではないか心配、という話が来ています。

このようなケースで保佐人に就任した場合、保佐人としてはどのように考える
べきでしょうか。私なりの考えを記してみます。

まず、購入している宝飾品について、購入時期や価格を可能な限り確認します。
そして、これらの宝飾品が、価格相応の品質を有しているかを確認します。

もし、これらの宝飾品が、購入価格からはかけ離れた品質しか有していなかった
場合、まさに騙されたことになりますので、少なくとも今後の購入は、その
販売店からは行わないようにし、さらに購入した宝飾品の返品と代金返還請求が
できるかについて検討することになります。

そして、もし、これらの宝飾品が、購入価格相応の品質を有している場合、特別な
事情がない限りは、すでに購入した宝飾品の返品と代金返還請求はできないと
考えることになります。

この場合で、今後、ご本人が宝飾品の購入を希望した場合、保佐人はどう考える
べきでしょうか。

保佐人としては、ご本人の資産の状況(預貯金の金額等)や収支(年金の金額や
生活費の金額)を調べた上で、例えば月に○万円であれば、宝飾品の購入に
充てても生活に問題が生じない、という余裕があるかどうかを判断します。

そして、そのような余裕がある場合には、ご本人にその金額やその算定方法を説明
して、その枠内での購入の具体的なあり方について話し合うことになります。

そのような余裕がない場合には、ご本人にその旨を説明し、当面宝飾品の購入が
できないことの理解が得られるように務めることになります。

保佐人として留意すべき点は、やはり、まずご本人の意思に応えられるかを考える
べきであり、「騙されているのではないか」という親族の危機感は、参考にはしつつ、
ただし、必要以上にそれに引っ張られないで方針を立てていくことかと思います。

関連記事

  1. 任意後見と意思決定支援
  2. 先物取引被害全国研究会
  3. 東弁税務委員会委員長に就任しました
  4. 原野商法の二次被害
  5. 交通事故の損害賠償 弁護士に委任するメリットのまとめ
  6. 精神疾患の方の近隣トラブル
  7. 【相続法改正】相続された預貯金債権の仮払い制度
  8. 消費者問題研修の講師とパネリストを務めました。

最近の記事

PAGE TOP